「四方の道」企画最終弾として、ちょっと遠出をして、40km東の
シント・トライデン Sint-Truiden に行ってきました。
最後に残った”東の道”は、隣市 Tienen に通じる Tiensesteenweg。
変速機なしのチャリンコには辛い緩慢なアップダウンの連続で、
しかも途中数kmにわたって二輪車用レーンが消失する悪路を、
片道2時間半かけて突っ走ってきました。
…バカですか?でしょうね。
ほっといてもらいましょうか(笑)

ルーヴァンが属するヴラームス・ブラバント州と、シント・トライデン
を含むリンブルフ州の境界付近は、Haspengouwと呼ばれるベル
ギー有数の果樹園地帯。
中間地点の Tienen を過ぎた辺りから、道の両側に連綿と、白い
花の咲き誇る洋梨畑が続くようになります。

シント・トライデンの街は、この地方出身の聖人トルードが7世紀半ば
に建てた修道院教会を核として発展しました。
オリジナルの建築は、ノルマン人による破壊(9c)、フランス革命時の
修道院破壊運動による閉鎖(18c)、火事(1975年)という度重なるダ
メージを経た結果、完全に姿を消してしまいましたが、現在もなお、11
世紀の大改築期に造られた塔(↑上写真左:①)とクリュプタを見ること
ができます。
まずは街の中心部フロート・マルクトへ。
ちょうど土曜市が立っていて、ルーヴァンのそれをしのぐ人出で賑わっ
ていました(上写真中:②)。普通の青果や畜産品、日用品の他に、
Haspengouwらしく、果樹の苗木や肥料、プランターなどの園芸用品、
さらにはなぜか、活簀に入った観賞魚を売ってたりしました(↑上写真右:③)。

④(上左・中): 修復中のノートルダム教会とパイプオルガン。
⑤(上右) : 市庁舎横の鐘楼(17世紀)。ちょうどカリヨンの生演奏がある
日で、着いたときには独特の澄んだ音色が街中に響き渡って
いました。
若干、空が薄曇ってきたので、降り出さないうちにさっさと塔にのぼってし
まうことにします。
約30mの塔の頂上へ至る196段の階段は、oeverの苦手な、下の透けて
見えるタイプ。

てっぺんは、吹き飛ばされそうなくらいの強風が吹き荒んでいましたが、
360度の眺望は素晴らしかったです。ルーヴァンのシント・ピーテルス教会
の尖塔は…さすがに見えないな f ^ ^ )
共通券で入場できるクリュプタと、コンサートホール、迎賓室を見た後、
近くの市立博物館へ。
インフォのおばちゃんは、塔の入場券で博物館も入場できるから、と恩着せ
がましく言っていましたが、HPによるとこの博物館、常時、誰でも無条件で
入館料タダです。
現在開催中の企画展は、”appels met zwembandjes” (浮き輪をつけたリンゴたち)
という果実の収穫~出荷の工程におけるテクノロジー進歩の展示、そして
すぐ近郊のブルステム空軍基地の歴史を中心とする航空関係の展覧会。

空軍はすっ飛ばしたので知りませんが、リンゴのほうはそこそこ面白かったです。
各種果物の収穫から出荷の工程が、展示や映像で詳しく見られる他、用途別の品種の
選び方とか、鮮度の保ち方などのお役立ち情報なんかも。
収穫したリンゴのカートを、水を張ったプールにドサッと空け、水流で測定器の下を
くぐらせて、大きさ・重さ・形・色合い等々の項目を判定し、等級別に分かれたレーン
に流す行程は、結構、視覚的にインパクトがありました。展覧会のタイトルはここから
来ているわけですね。リンゴが水に浮くという性質を利用して、傷つかないよう、かつ
迅速に仕分けする工夫。
デリケートな収穫物を扱う果物産業も、現在ではかなりの部分が機械化されている
ようですが、基本的に収穫は、未だに人間の手作業で行っているそうで、やっぱり
どんなものにも、どうしても画一化・効率化ができない部分ってあるんですよね。その
うち、熟度センサーとコンピュータ制御のレーザー鋏のコンビネーションで、自動収穫
が可能な温室とかが開発されるのか、いや、もう開発済みなのかもしれませんが、
かえって手間がかかりそうな気もします。
市立博物館の次は、フランシスコ会修道院美術館へ。
主として、修道会の歴史や会士たちの生活に関する展示を行っているところですが、
絵画や彫刻に関しても、小品ながら興味深い作品を結構持っています。

⑥(上左) : 子供向けに図解された聖フランチェスコの生涯。
昨今のご多聞にもれず、この館も子供向けワークショップに力を入れて
います。
修道院生活体験wsの紹介では、修道服を着せてもらった子供たちが、
腰縄の結び目を作るのに四苦八苦している写真とか貼ってあって微笑ま
しかったです。
⑦(上中) : この14世紀の聖母子像は、約400年の間に少なくとも14回の塗り直しの
手が加わり、マリアの衣服の色だけでなく表情なども、当初とはかけ離れ
た印象になってしまっていました。 近年、ようやく加彩部分が除去され、オ
リジナルの姿を幾分か取り戻すことができたものです。
修復の分野では、ちょっと有名な作例ですが、まさかここで見られることに
なるとは、うれしいびっくりでした。
最後に、ベギンホフへ寄ってみました。
ルーヴァンのと比較すると、だいぶ開けた明るいイメージで、通路が広くて平坦なせいか、
変化に乏しくて、ちょっと趣に欠ける印象を受けました。

ここの教会には、14-17世紀にわたって描かれたフレスコ壁画が残されています。
マリアの生涯や聖人伝の場面を主題にしており、素朴な色調と形態把握ながら
かえって不思議な力強さを感じます。
そして、Sint-Truidenといえば、TVドラマシリーズ "Katarakt"。
傾きかけた嫁ぎ先の農場経営の立て直しに奔走する、果物栽培農家の嫁の話です。
「白内障」を意味するタイトルが示唆するように、彼女は深刻な眼病に侵されており、
リーマンのダンナは今更農業なんてやりたくない消極野郎、子供たち2人は難しい年
頃、実家の父親は封建主義的で援助なんて期待できそうもなく、母親は何やら秘密
を抱えていて…と、まあ、そこそこドロドロというか、ゴチャゴチャしています(笑)。
ちなみに私は見たことありません。
このドラマ、Sint-Truiden とその隣の Borgloon を中心とする Haspengouw 地帯でロケ
が行われておりまして、観光案内所に行くと、ロケ地を巡るための Katarakt地図なんて
ものをもらえたりします。
ベギンホフの近くには、”Kataraktインフォセンター(笑)”があり、キャラクター紹介だとか
ドラマのワンシーンのパネル再現だとかを見ることができます。きっと熱狂的Kataraktファ
ン(そんなものがいるのかどうかは知らんが)にとっては聖地ですね。
というわけで、東の道の、先の先のそのまた先くらいにあったのは、梨の花の咲き誇る、
歴史と産業とエンターテイメントが同居する静かな里でした。
あまり書きませんでしたが、途中の果樹園地帯はやはりなかなかの眺めで、二輪車用
レーンが消えた本道から迂回して脇道に入る度に、林の奥にそっと隠されたような、絵
みたいにきれいな村に行き当たって、何度かそのまんま足を止めてしまいたい気分にな
りました。
ブリュッセルやアントウェルペン、ブリュッヘ、ヘントといった観光地ももちろん良いです
が、こうした近場の街や都市にも、それぞれちゃんと歴史があって、役割があって、そ
の流れの中で営まれてきた人々の生活がある。
当たり前のことですが、そういう埋もれた時間の流れに目を向けてみるのも、時には面
白い、そんなことを感じさせてくれた四方探訪の小企画でした。
シント・トライデン Sint-Truiden に行ってきました。
最後に残った”東の道”は、隣市 Tienen に通じる Tiensesteenweg。
変速機なしのチャリンコには辛い緩慢なアップダウンの連続で、
しかも途中数kmにわたって二輪車用レーンが消失する悪路を、
片道2時間半かけて突っ走ってきました。
…バカですか?でしょうね。
ほっといてもらいましょうか(笑)



ルーヴァンが属するヴラームス・ブラバント州と、シント・トライデン
を含むリンブルフ州の境界付近は、Haspengouwと呼ばれるベル
ギー有数の果樹園地帯。
中間地点の Tienen を過ぎた辺りから、道の両側に連綿と、白い
花の咲き誇る洋梨畑が続くようになります。



シント・トライデンの街は、この地方出身の聖人トルードが7世紀半ば
に建てた修道院教会を核として発展しました。
オリジナルの建築は、ノルマン人による破壊(9c)、フランス革命時の
修道院破壊運動による閉鎖(18c)、火事(1975年)という度重なるダ
メージを経た結果、完全に姿を消してしまいましたが、現在もなお、11
世紀の大改築期に造られた塔(↑上写真左:①)とクリュプタを見ること
ができます。
まずは街の中心部フロート・マルクトへ。
ちょうど土曜市が立っていて、ルーヴァンのそれをしのぐ人出で賑わっ
ていました(上写真中:②)。普通の青果や畜産品、日用品の他に、
Haspengouwらしく、果樹の苗木や肥料、プランターなどの園芸用品、
さらにはなぜか、活簀に入った観賞魚を売ってたりしました(↑上写真右:③)。



④(上左・中): 修復中のノートルダム教会とパイプオルガン。
⑤(上右) : 市庁舎横の鐘楼(17世紀)。ちょうどカリヨンの生演奏がある
日で、着いたときには独特の澄んだ音色が街中に響き渡って
いました。
若干、空が薄曇ってきたので、降り出さないうちにさっさと塔にのぼってし
まうことにします。
約30mの塔の頂上へ至る196段の階段は、oeverの苦手な、下の透けて
見えるタイプ。



てっぺんは、吹き飛ばされそうなくらいの強風が吹き荒んでいましたが、
360度の眺望は素晴らしかったです。ルーヴァンのシント・ピーテルス教会
の尖塔は…さすがに見えないな f ^ ^ )
共通券で入場できるクリュプタと、コンサートホール、迎賓室を見た後、
近くの市立博物館へ。
インフォのおばちゃんは、塔の入場券で博物館も入場できるから、と恩着せ
がましく言っていましたが、HPによるとこの博物館、常時、誰でも無条件で
入館料タダです。
現在開催中の企画展は、”appels met zwembandjes” (浮き輪をつけたリンゴたち)
という果実の収穫~出荷の工程におけるテクノロジー進歩の展示、そして
すぐ近郊のブルステム空軍基地の歴史を中心とする航空関係の展覧会。



空軍はすっ飛ばしたので知りませんが、リンゴのほうはそこそこ面白かったです。
各種果物の収穫から出荷の工程が、展示や映像で詳しく見られる他、用途別の品種の
選び方とか、鮮度の保ち方などのお役立ち情報なんかも。
収穫したリンゴのカートを、水を張ったプールにドサッと空け、水流で測定器の下を
くぐらせて、大きさ・重さ・形・色合い等々の項目を判定し、等級別に分かれたレーン
に流す行程は、結構、視覚的にインパクトがありました。展覧会のタイトルはここから
来ているわけですね。リンゴが水に浮くという性質を利用して、傷つかないよう、かつ
迅速に仕分けする工夫。
デリケートな収穫物を扱う果物産業も、現在ではかなりの部分が機械化されている
ようですが、基本的に収穫は、未だに人間の手作業で行っているそうで、やっぱり
どんなものにも、どうしても画一化・効率化ができない部分ってあるんですよね。その
うち、熟度センサーとコンピュータ制御のレーザー鋏のコンビネーションで、自動収穫
が可能な温室とかが開発されるのか、いや、もう開発済みなのかもしれませんが、
かえって手間がかかりそうな気もします。
市立博物館の次は、フランシスコ会修道院美術館へ。
主として、修道会の歴史や会士たちの生活に関する展示を行っているところですが、
絵画や彫刻に関しても、小品ながら興味深い作品を結構持っています。



⑥(上左) : 子供向けに図解された聖フランチェスコの生涯。
昨今のご多聞にもれず、この館も子供向けワークショップに力を入れて
います。
修道院生活体験wsの紹介では、修道服を着せてもらった子供たちが、
腰縄の結び目を作るのに四苦八苦している写真とか貼ってあって微笑ま
しかったです。
⑦(上中) : この14世紀の聖母子像は、約400年の間に少なくとも14回の塗り直しの
手が加わり、マリアの衣服の色だけでなく表情なども、当初とはかけ離れ
た印象になってしまっていました。 近年、ようやく加彩部分が除去され、オ
リジナルの姿を幾分か取り戻すことができたものです。
修復の分野では、ちょっと有名な作例ですが、まさかここで見られることに
なるとは、うれしいびっくりでした。
最後に、ベギンホフへ寄ってみました。
ルーヴァンのと比較すると、だいぶ開けた明るいイメージで、通路が広くて平坦なせいか、
変化に乏しくて、ちょっと趣に欠ける印象を受けました。



ここの教会には、14-17世紀にわたって描かれたフレスコ壁画が残されています。
マリアの生涯や聖人伝の場面を主題にしており、素朴な色調と形態把握ながら
かえって不思議な力強さを感じます。
そして、Sint-Truidenといえば、TVドラマシリーズ "Katarakt"。
傾きかけた嫁ぎ先の農場経営の立て直しに奔走する、果物栽培農家の嫁の話です。
「白内障」を意味するタイトルが示唆するように、彼女は深刻な眼病に侵されており、
リーマンのダンナは今更農業なんてやりたくない消極野郎、子供たち2人は難しい年
頃、実家の父親は封建主義的で援助なんて期待できそうもなく、母親は何やら秘密
を抱えていて…と、まあ、そこそこドロドロというか、ゴチャゴチャしています(笑)。
ちなみに私は見たことありません。
このドラマ、Sint-Truiden とその隣の Borgloon を中心とする Haspengouw 地帯でロケ
が行われておりまして、観光案内所に行くと、ロケ地を巡るための Katarakt地図なんて
ものをもらえたりします。
ベギンホフの近くには、”Kataraktインフォセンター(笑)”があり、キャラクター紹介だとか
ドラマのワンシーンのパネル再現だとかを見ることができます。きっと熱狂的Kataraktファ
ン(そんなものがいるのかどうかは知らんが)にとっては聖地ですね。



というわけで、東の道の、先の先のそのまた先くらいにあったのは、梨の花の咲き誇る、
歴史と産業とエンターテイメントが同居する静かな里でした。
あまり書きませんでしたが、途中の果樹園地帯はやはりなかなかの眺めで、二輪車用
レーンが消えた本道から迂回して脇道に入る度に、林の奥にそっと隠されたような、絵
みたいにきれいな村に行き当たって、何度かそのまんま足を止めてしまいたい気分にな
りました。
ブリュッセルやアントウェルペン、ブリュッヘ、ヘントといった観光地ももちろん良いです
が、こうした近場の街や都市にも、それぞれちゃんと歴史があって、役割があって、そ
の流れの中で営まれてきた人々の生活がある。
当たり前のことですが、そういう埋もれた時間の流れに目を向けてみるのも、時には面
白い、そんなことを感じさせてくれた四方探訪の小企画でした。
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