美術史仲間と二人で、3年ぶりにアントウェルペン王立美術館を訪ねまし
た。南駅のホームを埋め尽くす落書にすら、アカデミックなデッサン訓練
の痕がうかがえる芸術の街、アントウェルペン。
デイリーストアの看板さえ、その前衛的な感性によってオリジナリティを
主張しています。
→クリックして、拡大写真で中央の赤い
蓋の瓶のラベルをご覧下さい。
「朝の梅干は、冷たいシャワーのごとく」
・・・うーむ。言わんとすることは何となく
わかるが(笑)。
そして王立美術館。折しも現代美術館開館20周年記念の共催
企画展をやっており、荘厳な大理石の階段の踊り場には、パリ在住の中国人アーティストDu Wang
が制作した爆乳スフィンクスが、来館者を阻むかのように鎮座しております。もっとちゃんと見たい
人は、現代美術館のHPwww.muhka.be/image_detail.php へgo。
相変わらずここの目玉は、長辺4m超えの大画面をこれでもかとばかり
に陳列した”リュベンス部屋”なのですが、以前ほどの威圧感が感じられ
なかったのは、ここ1ヶ月で17世紀美術に対する免疫力が上がったから
でしょうか。
それにしても、16世紀~マニエリスム期の展示室で、イタリア・ルネサン
スの重圧に対する苦闘の跡を目の当たりにしてから、17世紀の部屋に
移ると、その苦闘が一転して、いとも軽やかに克服されてしまっていること
に一抹のもの悲しさすら感じます。もっとも、
境界に位置するものというのは、常に
定義しにくく中途半端に見えますが、 実はそこに重要な変化や
発展の萌芽があるわけで、その点では今でも、17世紀の明快さ
よりも、16世紀後半の捉えどころのなさ複雑さのほうに惹かれる
自分がいます。
修復室では、依然としてメムリンクの《奏楽天使》の修復が続いて
いました。全く作業が進んでいないように見えても、洗浄後の彩度
の高い部分は、3年前よりも確実に増えているのでしょう。今日は
実際の作業が見学できなかったので、次の開放日にまた行ってみることにします。
4時間ほど費やして、さすがに燃料が切れてきたので、近くのトルコ料理
店でお昼。
べイクド・ポテト専門という、ちょっと変わったお店でしたが、トルコ人経営
のレストランの常で、安くてヴォリュームがあって美味しくて、アタリでした。
ホワイトソースやチーズをベースに、肉や野菜を合わせたソースをかけ
て焼いたジャガイモが出てくるのですが、なにせ、イモ自体が化けもん
みたいにデカいのです。楕円形の長い方の径が20㎝以上ある。いったい
どんな遺伝子組み換えの成果だ(笑)。
マイヤー・ファン・デン・ベルフも回る予定だったのですが、やはりというか
何と言うか、道に迷いまして・・・(^ ^;) こちらも持ち越しです。
アントウェルペンは、洗練されたいい街です。特に、フランドル美術史をやっている者には、立派
な美術館、情報の宝庫の古文書館、世界屈指の研究所・・・と、本当に至れり尽くせりの環境が
整っています。
でもやはり、住む街ではなく、頻繁に訪れる街、という距離感がちょうどいいように思う。私には、
ルーヴァンの地味さ・小ぢんまり感・垢抜けなさが合っているのでしょう。